先日Webの広告で「ちょっとこれはどうなんだろう?」って思うようなデザインスクールの広告を見つけました。
正直、みていて嫌な気持ちになるな〜って感じの。
デザインとか、カメラとかって「3ヶ月で楽に稼げる!」みたいなの多いよね〜
そうなの。正直プロのデザイナーとしては、それがすごく嫌で…
なので今日は、デザイナーとして食べていくってどう言うことなのか、
一応デザイン関係の業界に15年以上いる身としてお話ししようと思います!
\この内容を音声で聴きたい方はこちら↓/
ちょっとこれは…ひどい広告を見つけてしまった。
私が「これはちょっとな〜…酷すぎる…」と思った広告は、こちら。
これって平たく言うと
『Webデザイナーに比べて、グラフィックデザイナーの方が簡単で、
ママでも隙間時間で稼げる』みたいな意味ですよね。
この広告を見たとき、Webデザインとグラフィックデザインに
優劣をつけることにも疑問を抱いたし、
子育てに追われているお母さんたちのことも
ちょっとバカにしているように感じて、すごく嫌な気持ちになりました。
なぜなら、正直デザイナーという仕事は、
そんなにお手軽じゃないし、誰にでもできるものでもないんです。
ただでさえ子育てで忙しいお母さんたちが、
現実を知らないがためにこういった広告を鵜呑みにした結果、
時間もお金もさらに無駄にしてしまう…という姿も想像できすぎて…辛い。
ちなみに、その時の気持ちををTwitter で呟いたら反響が大きくてプチバズりました、
9割以上は賛同してくれる声だった印象です。
賛同してくれたのは主に現役デザイナーたち。つまりはそういうこと。
デザイナーという仕事につくのは誰でもできることではないし、
もしなれたとしても、その後稼げるかどうかというのは別問題としてあるんです。
だから大きな共感が得られたんだなと感じています。
「デザイナーを知らない人」をターゲットにした「稼げる」の裏側
では実際問題、デザイナーになるというのはどういうことなのか、
私の知る限りではありますが、感じていることを話していきますね。
どんな職業でも当たり前なんですが、デザイナーにもそれぞれ立場やレベルというものがあります。
すごくレベルの高い一流デザイナーもいれば、企業で働く会社員デザイナーでもいれば、
長年続けている中堅デザイナーもいれば、スクールを出たばかりの新人デザイナーもいます。
それなりの時間デザインに関わる仕事をしていれば、
「あのレベルを目指すのであれば、今の働き方や時間の使い方ではあそこにはいけないな」ということが何となくの肌感としてわかります。
けれど、実際にまだデザインの仕事をしていなかったり、身近にデザイナーの友人などがいない人たちは、
どれくらいのレベルになるのにどれくらいの時間を要するのかや、
それがどれくらい大変なことなのか、どれくらい倍率の高いことなのか、全く分からないですよね。
正直あの広告は、こういったことを知らない人に向けてのものです。
分からないのをいいことに、簡単にできる風に見せかけて、
とりあえずスクール生を増やして行こうという戦略が透けて見えます。
デザインスクールを出ただけでたどり着ける「稼げる」のレベルとは
ただ、デザイナーの世界を知らない人たちでも、
超一流デザイナーは一握りしかいないであろうことや、
新人デザイナーや副業デザイナーがいることは想像がつくと思います。
問題は「新人」と呼ばれる人たちと「超一流」と呼ばれる人たちの間に位置する
中間層がどれくらい見えているのか?というところ。
おそらくですが「隙間時間で誰でも簡単にデザイナーになれる」という広告だけを見ると、
スクール卒業したてはもちろん新人だとしても、そこからちょこちょこお仕事を受注していけば、
自然と中間層に入れる気がしてしまうんじゃないでしょうか?
………それはぶっちゃけ、甘く見過ぎです。
正直なところ、スクールを出たくらいでは、まずデザイナーとしてデビューできるところまでたどり着く人はほとんどいないと思われます。
(もちろんその人の力量や努力次第で可能性がないとは言わないですが)
私がみてきた感覚だと、スクールを出てまずできるのは、
ココナラやランサーズで格安の募集をかける…ここら辺までじゃないでしょうか。
さらにそこから経験を積んで、自力での集客・受注・ヒアリング・デザイン作業・納品…
となってくると、やることの幅も質もレベル感も、全く次元が変わります。
じゃあ実際「隙間時間で10万円稼げる」デザイナーはいないのか?
例えば、一流デザイナーと呼ばれる人たちが自分の隙間時間を使って月10万円稼ぐことは楽勝だと思います。
例えばバナーを一枚、1時間で作っても10万円くらいを見積もることは不思議なことではないので。
つまり、字面だけ見て、隙間時間で10万稼ぐデザイナーがこの世に存在するかしないか?と聞かれれば、存在します。
ただしそれは、そこに到達するまでに気の遠くなるような時間とお金と情熱、
自分が割けるリソースを全て割いてきた過去があり、かつ実力のあるデザイナーに限る。
という条件付きです。
では、スクールを出たばかりの初心者さんが10万円を稼ごうとなったらどうでしょうか?
例えばココナラで、一枚1000円のサムネ画像の受注が取れるとして、
【1000円×100枚=10万円】です。
1ヶ月に100枚のサムネ……何時間かかるの!?
単価が安いのに稼ぐってことは、数をこなす以外無いよね。
数をこなすってことは、時間をかけるか、もしくはスピードをあげるか…
だけど、1枚30分で作ったとしても
1ヶ月に50時間…隙間時間…ではできないってわかるよね。
こういった裏側は一歳見せずに、簡単にできますよ!という煽り方をしていることが、先述の広告最大の問題。
個人的な感覚としては、全くの嘘とは言わないけれど、詐欺的だし、ちょっと騙しは入ってるかなって思います。
フリーランスデザイナーって結局稼げるの?
では、隙間時間は無理だとしても、頑張ればフリーのデザイナーは稼げるのか稼げないのか?ということも言及しておきましょう。
まず私がデザイナーになった当時は、Webというツールで集客する手立てが無いに等しかったため、
フリーランスになれるのはデザイナーの中でもごく一部、意欲も実力もキャリアもあり、
なおかつ人脈も営業力もある特別な人が選ぶ道でした。
ただ、今は時代も変わってWebでの集客もできるようになったので、
飛び抜けた才能がなくても、たくさん受注すれば自分次第で稼げる仕事だとは思います。
先ほどもお伝えした通り、初心者さんであれば、お仕事に費やす時間と労力がそのまま比例して
働いた分の対価となる…つまり、楽でもなんでもない普通のお仕事ってことです。笑
むしろ自分で営業しないといけなかったり、クライアント様の希望を汲み取って納期も守って…という部分を考えると、
パートで働いた方がよっぽど楽に稼げる。なんてことはザラにあると思います。
それでもやるかどうかは、自分がデザインを好きかどうかにかかってくるんじゃ無いでしょうか?
デザイナーが、楽に稼げる仕事じゃなくてもやりたいか否か
前半でデザイナーにはレベル感があるという話をしてきたんですが、
一流デザイナーと呼ばれる人には一流デザイナーが担うべき仕事があるし、
新人デザイナーにも新人デザイナーが引き受けるべき仕事があります。
全てのデザインを一流デザイナーが請け負っていては、仕事が全く回りませんから。
つまり、どちらの仕事が素晴らしいということは絶対にないと思っています。
それぞれの持ち場があって、それぞれに担っているんです。
この世に必要のない仕事なんて1つもなくて、必要とされてるから仕事として成り立ってるわけですよね。
ただ、新人デザイナーが稼ぐためには、それなりの数をこなすしかないのは現実です。
なので、隙間時間でできるわけではないという現実を知った上で、
それでもデザイナーになりたいと思うのであれば、
きっかけとしてスクールを利用することはとても良いんじゃないかなと思います。
デザイン業界というのは、ただでさえデザインが好きで好きで仕方ないような人がうじゃうじゃいる、倍率の高い世界です。
誰でも簡単にできるわけがないということを知って、無駄なお金と時間をスクールにつぎ込む人が減るのを祈るばかりです。
広告って難しいですね。
難しいけど、やっぱり品性を持って、良識を持っていたいものです。
とにかく刺さって集客につながればよし!ってもんじゃない。
私も気をつけます!