ロングライフデザインという考え方
大学生の頃、プロダクトデザイナーの深澤直人さんが大人気だった。
深澤さんと言えば、インフォバーや±0、
無印良品の壁にかけるCDプレイヤーなどの
超有名プロダクトを手がけているので、
知っている人も多いんじゃないだろうか?
デザイナーを目指しながらも、
全然有名デザイナーに興味のなかった私でも、
深澤さんのプロダクトは純粋に美しくて大好きだった。
そして深澤さんといえばロングライフデザインという考え方が有名で、
長く人々に愛され続ける商品は、
その機能性はもちろんのこと、
デザイン性も素晴らしいのだということを強く訴え続けていた。
それを見える形、触れる形にしたのが
D&DEPARTMENTというセレクトショップ。
世田谷の奥沢に本店がある。
当時、最も旬なデザイナーが手がけているセレクトショップだなんて、
さぞおしゃれなんだろうと思って見に行った。
そしたら意外にも、ただの「たわし」や
実家に転がってそうな「バケツ」や
市役所でぞんざいに扱われている「ボールペン」
などが置いてあったのが衝撃で…。
でも、すごくいい。グッときた。
祖父の倉庫の匂いと湿気
私は元々、祖父が管理している
ホコリ臭くてじめっとした倉庫が大好きだった。
そこには経年劣化して薄汚れた「道具」がたくさん置いてあって、
どれもこれも新品にはない味が出ていて、
それらを発掘しては「これもらっていい?」と聞いて、
修理して使うのがワクワクした。
いつも親戚たちには「そんな汚いもの捨てなさい」とか
「変なものに興味を持つのね」とか言われてたけど、
私からしたら、こんなに素晴らしい一点モノ他にないのに、
わからないなんて可哀想だな〜くらいの気持ちだった。
だから、D&DEPARTMENTに行った時、
超有名デザイナーに対しておこがましい話だが、
「私と同じ気持ちの人だ」と思って、
勝手に仲間意識を持ったものだった。
時限装置となるデザインの「概論」
話は変わって、当時のことでもう一つ思い起こすのは、
大学に入って初めての「デザイン概論」の授業。
小中高と、授業名といえば数学とか、国語とか、倫理とかだったのに、
大学に入った途端「概論」
概論……てなんだ?
そんなレベルで初めての講義に出席した。
そして、その講義で一番最初に教えられたのが、
[用と美]という概念。
「用=本質機能」と「美=心地よさ」の
調和をはかることこそが、デザインの本質である。
そういう話から始まった。
今思うと、何年もデザインを実践してきた人にその話をするならいざ知らず、
これからデザインを勉強しようという学生の
一発目の講義にしてはあまりにも本質的で、
なんのこっちゃらわからなかったけど、
美しさや世界観を追求する絵画の世界から、
人間の営みと並走するデザインの世界に足を踏み入れたんだ
ということはなんとなく感じて、
本当の意味で理解はできていないけど、
「用の美」は私のデザイン生活の中で
重要な言葉として記憶にしっかり刻まれた。
装置起動。点と点は、ずっと繋がっていた。
19歳のあの日から20年。
ずーーーーーっとデザインしている。
そしてここ数年、ブランディングも手がけ始めた。
なんで私は、デザインだけではなく、ブランディングをやるんだろう?
正直、ブランディングは手間がかかる。
理解してもらうのも難しい。
言われたお題をこなしてデザインだけやってれば仕事はあるし、
今のところ生活にも困らない。
なのに、どうしてわざわざ手間暇かけてブランディングを……?
実はこの問答は、私の中で何度となく出ては消えを繰り返し、
未だ答えのでない謎だった。
だけど、それが昨日、あることがきっかけで突然答えが出た。
私が作りたかったのは
用と美を兼ね備えた「ロングライフデザイン」だったんだ。
デザイナーならなんでもいい。わけじゃない。
社会人になって、大量消費社会の権化みたいな
「メーカー」という城に入った。
メーカーでは、自分たちが生み出したものを平気で捨てる。
ガンガン捨てる。
なんなら、1000個しか売る予定のない物でも、
工場に2000個からしか作らない!と言われれば、
2000個作って半分捨てる。
それくらいのことを平気でやる悪魔の城だった。
誰が買うのかもわからないような商品を
「今季の売り上げ」のためだけに開発したことも何度もあった。
当時私は、憧れのデザイナーになったはずなのに、
いつもイライラしていた。
売り場を見にいけば、自分の商品が置いてあるのは嬉しいけど、
なんか、それだけだった。
「こんなもの作ってなんの意味があるんですか?」
売上のための辻褄合わせで企画されるそれらに真正面から噛み付くので、
会社からも疎ましいと思われていたに違いない。
状況を変えたくて独立したけど、
フリーランスになっても、その状況はあまり変わらなかった。
ヘッダーを作って欲しい!と言われて、作れば喜ばれた。
その人だけのデザインなので、
喜んでくれる人を目の前にすれば、
メーカーにいた時よりはデザインの意味があるような気がした。
だけど、ほとんどの女性起業家という人たちは、
ファッションのようにデザインを消費して、
飽きたらさっさとその活動自体を辞めていった。
なんか、多分その度に、
自分が産んだ子供を捨てられるみたいな気持ちになっていた。
そりゃあ辛いわけだ。
ロングライフデザインは、時が経って完成する。
昨日のライブ配信で、
占星術サロンを運営する水澤純さんと話をした。
純さんは、私が5年前に作ったヘッダーのデザインを今でも大事に使って、
しかも着実に事業を大きく育てていってる。
ただのデザインだったものは、今確実にブランドに昇華した。
そして純さんから、
「テリさんのデザインがなければ、
ここまで来れなかったかもしれないくらい
このデザインがあって良かった」
そう言ってもらえて、やっと気づいた。
そうか、ロングライフデザインなんだ。って。
自称女性起業家さん達が、趣味のようにビジネスを始めて、
さっさといなくなってしまう背景には、
単純に精神面で未熟(毒吐いてごめんなさい)な場合も多いけど、
ビジネスは「育てる」ものなんだってことを知らない人も多いというのも、
要因としてあると思う。
私にとって、ブランディングは手段のひとつ
だから、ブランディングを伝えたい。
デザインの本当の力は、
瞬間的な爆発力だけじゃないんだって知ってほしい。
Web上でもリアルでもなんでもいい。
形式なんて問わないけれど、作っては消えるデザインじゃなくて、
しっかり育ってブランド化して、
ロングライフデザインだねってみんなの目に馴染んで
そこにあって当たり前のデザインが作りたい。
やっぱり私の中心はデザインで、
その上位に位置すると思っていたブランディングは、
私にとってはデザインのための手段だった。
このまま個人事業主として力をつけるのか、
経営者という立場を目指すのかどうかもずっと迷っていたけれど、
それも実はどうでも良くて、
デザインのために経営が必要ならやる。
それだけだった。
(今のところ必要ないのでやらない)
人生の本筋に戻ってきた瞬間
私は、今まで通り心置きなく
デザインとデザインのための色々に集中すればそれでいい。
デザインバカのままでいい。
大きく「デザイン」て書いてある一本道を進めばいいだけ。
そう思えたら、一気に霧が晴れた。
「テリちゃんはデザインだよ」
ずっとそう言われ続けてきたのに、やっぱり人は自分のことが一番わからない。
私、これからは迷わずデザインの道を行きます。
ロングライフデザインを世に出すことを目指します。
そのための手段として、ブランディングは必須なので続けます。
そして、一緒にそれを作りたいと思ってくださる方と出逢いたいです。
つまり、それなりの本気度を持ってデザインの依頼をしてください。
ファッション起業とか、一攫千金起業とか、
承認欲求起業とか、ここではないどこかへ起業とか…お断りします。笑
なんて、これから長期講座の募集をかけようというタイミングで
お客様が逃げ出したくなる言葉をかける。←
それでも、一緒にやりたいという人が、
来てくれますように!!!