世界中に浸透している”ブランド”の最たる例であるディズニー。そのディズニーのグッズ制作をしてきた経験から得た「作ったブランドを育てて浸透させるために重要な3つのこと」についてお話をしていきたいと思います。
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ディズニーグッズをデザインした経験
親の影響で小さい頃からディズニーファンだった私は、好きが高じて、実はディズニーグッズを制作するようなデザイン事務所で働いていた時代があります。
通常ディズニーのグッズを作る会社は、ライセンサーであるディズニーから許可を得て、かつフィーを支払って制作させていただく、ライセンシーという立場になります。
ところが私が勤めていたデザイン事務所は少し違って、ディズニーやオリエンタルランドから直接依頼を受けてグッズを作るような、ライセンシー以上、ライセンサー未満みたいな立ち位置でした。
そのためグッズだけではなく、ディズニーのブランドの浸透に欠かせない、「スタイルガイド」(キャラクターの色合い、アイコン、シーン、イラストなど、シーズンごとに定められるガイドライン)の方を作るお仕事まで経験させてもらっていました。
これはちょっとした自慢でもあります!
なので今日は、ディズニーから学んだ「作ったブランドを育てて浸透させるために重要な3つのこと」についてお話ししたいなと思います。
ブランドは、作ること以上に浸透させることが重要
そもそもブランディングというと、結構皆さんブランドを作る方に注目しがちなんですが、それ以上に重要なのが、そのブランドを育てて浸透させていくということです。
ブランドを作っただけでは、あくまでスタート地点に立っただけ。
どれだけ人の気持ちの中や頭の中にそのブランドのイメージを定着させていくか、ということの方がよっぽど難しいんです。
例えば”ディズニー”と聞いたら、ミッキーマウスの顔を思い浮かべられますよね?
ミッキーマウスが何色のパンツと何色の靴を履いていたか覚えていますか?
大体の方は覚えていると思うんですが、これってものすごいこと。
ブランドが育って、世界中に浸透しているということなんです。
ブランドの作り方ももちろん重要ですが、それよりも、どうやってウォルトが亡くなった今でもブランドのコアが引き継がれているのか、ぜひ参考にしてもらえたらと思います。
ディズニーから学ぶ、ブランドを育てるために重要な3つのこと
その1:やらないことを決めること
1つ目は、やらないことを決めるということです。
ディズニーはお酒やギャンブルを連想させるようなことや商品を絶対に扱わないと決めていました。
大人からも子供からも愛されるディズニーですが、ウォルトが作ったときには”世界中の子供たちのため”とターゲットを絞って作られていたんです。
なので、子供たちの成長にふさわしくないものは徹底的に除外しようということで、未だにギャンブルやお酒に関するものは許可されていません。
ちょっと調べていただくと分かりますが、ミッキーのイラストが描かれたラベルの付いたお酒は発売されていません。
ブランドとしてこれだけはやりませんよということを決めておくことがとても重要です。
ちなみにヘンテコレクションで決めていることは、私がちょっとでもダサイと思うことは、たとえ食いつく人が多そうでも、流行っていても、やらないということです。
その2:飽きずに続けること
2つ目は、飽きずに続けることです。
そもそも、ほとんどの人がブランドを作れないので、ブランドをしっかりと作った上で、”もうこのブランド飽きたわ”と思うまで続けられたら本当に大したもんだなと思います。
ブランドを作って、カラーやフォントなど最初にガイドラインを決めると、もうずっとそれを使わなきゃいけないので、まず自分が一番最初に飽きます。
例えば私もメインカラーは暗めなネイビー、髪の毛の色はオレンジ、と最初に決めましたが…
すでにめちゃくちゃ飽きてます。(特に髪色)
一方、客観的に見ているお客さんが私の髪の色に飽きるということは、そうそうありません。
ミッキーマウスもずっと同じ格好をしているけど、ミッキーマウスってそういうもんだというイメージが浸透しているので、”あの赤いパンツもう飽きたわ”とは思わないと思います。
逆に”もう毎日同じ服とか飽きたわー”とかミッキーが言い出したら困ってしまいます。
見ている側からすると、それでこそミッキーなんだから。
作って浸透させていくフェーズまでいけた暁には、その後に待っているのは自分が飽きずにそれを続けるというフェーズなんです。
実はそこがすごく重要。
何回これ言えばいいんだろう
いつまでこの格好でいればいいんだろう
と思ったとしても、それでいいんです。
ということで2つ目は、飽きずに続けることを意識してもらえたらと思います。
その3:ガイドラインを決めて向き合うこと
3つ目は、ガイドラインをしっかり決めることです。
ディズニーグッズの制作をしているデザイナーって実は世界中に何万人もいるんです。
その数限りないデザイナーたちがそれぞれ自分の個性で商品を作ってしまっては、ディズニーのブランドは崩壊してしまうので、がっちりとスタイルガイドが決まっているんです。
私がディズニーグッズを作るデザイン事務所にいた10年以上前の段階で、スタイルガイドの数は1000種類を超えていました。
その中からデザイナーが1つ選んで、それに従って作っていくわけです。
作成するその時々で作るグッズやアイテムはもちろん異なりますが、いかにそのガイドラインから外れない範囲内で最高のデザインに落とし込むかということを、
世界中のデザイナーたちが当たり前にやっているから、ディズニーはどこまでもディズニーなんです。
もちろん、ヘンテコレクションでもガイドラインは作ってあります。
以前とある外注のデザイナーさんに、そのガイドラインに沿ってアイテム制作を依頼したら、ガイドラインから思いっきり外れて仕上がったことがありました。
私からすると、ガイドラインはリスペクトをもって従うのが当たり前のもの。
だけどどうも、どこまで従えばいいのかも分からないし、オリジナリティを出したり新しくした方がいいと思ってしまったみたいなんですよね。
ブランドを崩さずに維持していくには、ガイドラインにしっかり向き合うスキルが必要なんだということを痛感した経験でした。
というわけで3つ目は、ガイドラインを決めて向き合うことでした。
作ったブランドを維持する努力
飽きずに浸透させていくことって、関わる人が増えれば増えるほど難しくなります。
世の中に浸透している数々のブランドには、本当に頭が上がらない思いです。
先ほどお話ししたディズニーももちろんそうです。
ライセンサーであるディズニー側に対してライセンシーは許可を取ってフィーもお支払いし、さらにグッズの売り上げの何%かをお支払いします。
だけど、その金額を払えば何でも作っていいかというと全然そうではありません。
アプルーバルシートという許可を得るための書類にデザインを添付して申請し、ガイドラインにちゃんと従っているかどうかのクオリティチェックをクリアする必要があります。
このミッキーはちょっと尻尾の先が欠けてるのでもうちょっと入れてください。
スティッチは耳の切れ目が左右対称じゃないので反転しないでください。
そんな感じでウォルト・ディズニーJAPANの本社のデザイナーさんたちが赤ペンを入れてくれます。それを何度もやり取りして、OKが出たものだけがこの世に出されるんです。
このような努力を経て、ブランドが徹底して維持されています。
作って終わりではないブランディング。その維持にこそ努力が必要で、育てて浸透させるまでが重要。
ぜひ、ご自身のブランドを作って飽きたなーと思った時は、今日の話を思い出していただければと思います!
実際私もこの記事書いてみて、髪の毛オレンジに戻そうかな…って反省しました。笑