ブランディングデザイン

デザイン依頼に必須な著作権やデザインデータについての基礎知識 🔊

デザイン 著作権
テリコ

例えばデザイナーに名刺のデザインを依頼したとして、
名刺の何にお金を払っていると思う?

レオン

名刺の何にって!?
考えた事もなかったけど、デザインをお願いすれば
素敵な名刺がもらえる!くらいの感覚かなぁ?

テリコ

それだとちょっと認識不足かも。
デザインは一度作ると長く使ったり、
他のものにも流用したい場合も出てくるから、
何に対しての金額なのか知っておいた方がいいかもね。

こんな人におすすめの記事です

▶︎デザイナーにデザイン依頼をする可能性がある。
▶︎作ってもらったデザインを長く使いたい
▶︎デザイナーへの依頼の仕方などわからないことだらけ。
▶︎デザインを他のものにも展開していきたい。
▶︎デザイン費をできるだけ安く済ませたい

\この内容を音声で聴きたい方はこちら↓/

「データちょうだい」は要注意ワード!

会社員デザイナーだった時代は考えも及ばなかったんですが、
フリーのデザイナーになってからちょこちょこ言われるこのひと言

クライアントさん

私イラストレーター持ってるので、
作ってもらった名刺のデータをいただけますか?

これ、実はデザイナーからすると
結構もやっとするひと言な可能性が高いので気をつけたほうがいいかもです!

レオン

そうなの?
けどさ【名刺のデザイン】を買ったわけだよね?

そう。まさにそこにデザイナーの思う【デザインの範疇】と
クライアントさんが思う【自分が買ったもの】の差
が表れているなと。

その差については、デザインの業界からすると
「そんなの知ってて当たり前でしょ!?」となりやすく、
クライアントさんからすると「そんなの聞いたことない!」という部分。

ここ10年程度でデザイン依頼をするハードルってすごく下がったこともあり、
そこの差が埋まらないまま来てしまってる現状があるんですよね。

テリコ

だからお互いの歩み寄りが大事!
デザイナーもちゃんと説明。
依頼する側もデザイン業界のセオリーを知る努力があるといいよね。

そもそも「デザイン費」とは何か?を知ろう

【デザイン費】ってなんのことだと思いますか?
作った「物」の費用?
それともデザイナーの「拘束時間」の費用?
意外なところで「アイディア」に対する費用かも?

デザイン 著作権

当たり前のように使う【デザイン費】と言う言葉。
これが意外と曖昧なことに気づきますよね。

結論としては、デザイン費は上記で挙げたものではない場合が多いと考えてもらえると、
この後のお話が少しわかりやすくなるかもしれません。

レオン

え!?じゃあ何にお金を払ってるの??

そこを説明するためには、
デザインの著作権について知ってもらう必要があります。

デザインの著作権は誰が持っている?

例えば名刺のデザインを依頼して、
そのデータも欲しいとおっしゃる方は、
デザイン費の中にはそのデザインに関する
全ての費用が含まれていると感じている人が多いかもしれません。

けれどそれは違っていて、
例えその人のために作ったデザインで、制作物を納品していたとしても、
デザインの著作権はそのデザイナーの死後50年まではデザイナー側に残ります。

著作権とは?

著作権とは平たく言うと

その作品がどう使われるのかを決める権利

つまり、著作権がデザイナー側にあるとすると、
例え依頼されて作ったデータであっても、
それをどう使うか決める権利はデザイナーにあるんです。

ということは「名刺として使用したい」と言われて作ったデータを
デザイナーの許可なく他のものに使用することは【二次利用】とみなされるため、
場合によっては追加の料金が発生します。

テリコ

つまり「デザイン費」とは、
その物を買ったり、デザイナーの人件費として発生する金額ではなくて、

そのデザインを使用する権利に対して支払いが発生している。

と考えてもらうとズレが少ないかもです!

デザインを依頼すると、名刺・チラシ・バナーなど、
目に見えて手に触れられる「物」が手に入るので誤解されやすいんですが、
「自分が買ったデザイン=自分のものだから自由に使える」ではないんですよね。
街で冷蔵庫や靴や食器を買うのとは全く違う。
そう認識してもらうのがとても重要です。

著作権は譲渡できるの?

せっかく作ってもらったデザインを自由に使いたい!と言う希望はよくあります。
ではその場合どうすればいいかというと、著作権の譲渡契約が必要になります。

ただ著作権には2種類あり、譲渡できるものとできないものがあるんです。

デザイン 著作権

譲渡可:財産を守るための【著作権】

まず一つ目は、通常の著作権。
こちらは主に作者の財産的な面を守る役割があります。

先程の例で言うと、本来であれば名刺としてデザインしたものを
他の何かに流用した場合、その都度費用が発生するはずなのに、
その支払いがされなかった!と言った時に、作者を守るのが著作権です。

こちらは譲渡してしまえば追加の主張はできません。
つまり著作権を譲渡した自分の作品が、
後にものすごい高値で取引されたからといって
譲渡したからにはデザイナーが追加の費用を請求することはできないわけです。

譲渡不可:感情を守るための【著作人格権】

対して著作人格権は、作者の感情の面を守る役割。

例えば自分が作った作品を誰かを傷つけたり
批判するための道具(例えば風刺画とか)として流用され、
それが自分の倫理観に反しているので傷ついた!といったケースの時に、
使用の停止を求めたりできる権利です。

こちらは感情がベースになっているので、そもそも譲渡することができません。

テリコ

著作権の譲渡契約を結んだら
何をされてもデザイナーには何も言えないか?というと
そうではないんですよね。
作品は自分の子供みたいなもの。
その作者として自分の作品がどう扱われるかについては
やはりずっと気になるものです。

著作権譲渡とデザインデータ譲渡の関係性

ちなみに、著作権譲渡とデザインデータ譲渡はセットな場合が多いです。
著作権だけ持っていても、
元のデザインデータが無ければ他への作り替えができませんし、
デザインデータだけ持っていても、著作権がデザイナー側にあれば、
作ってその都度確認が必要になり費用も発生する可能性があります。

そして、ここから先がまたちょっと複雑で…

デザイン 著作権

著作権譲渡費用とデザインデータ譲渡費用は別々にかかる!

実は、著作権譲渡費用とデザインデータ譲渡費用は別々な場合が多いです。
一般的な相場も調べてみましたがバラバラ。

著作権については一律20万円だったり、
製作費の10%だったり、製作費の2倍だったり…

デザインデータ譲渡は著作権譲渡費用に比べれば
割と相場があるような(無いような)…なんですが、
私が調べた範疇では、製作費の5〜10倍のところが多いようです。

レオン

5〜10倍!?
じゃあ3万円で名刺作ってもらったら、
データもらうのに30万円かかるってこと!?

テリコ

高い!って思うよね。
けどそこにはちゃんと理由があるので聞いて欲しい!

デザインデータ譲渡費用が高額になる理由

まずこの場合のデザインデータというのは、
jpegのように二次的な加工のしにくい
一枚ものの画像データのことではありません。

イラストレーターやフォトショップのような
専門ソフトで作成した元データのことを指します。

一枚もののデータとは違うところは、
データ内の素材を好きなように加工することが可能であるということ。

つまりこんな感じ↓

デザイン 著作権

そして高額になる理由がもう一つ。
専門ソフトで作成したデータの中身を同業者が見ると、
作者がどのような手順で、
どんな手法を使ってデザインをしているのかまでわかる場合があります。

そのため、デザインデータを譲渡するというのは、
お料理で例えると、

秘伝のタレのレシピを渡すのと同じことなんです。

レオン

そりゃ安くは譲れないわ…

テリコ

でしょ?笑

ブログ冒頭の「データください」に
もやっとしちゃう理由もわかってもらえると嬉しいな。

著者が実際に遭遇した危険なNGパターン

知らなかったがために、
せっかくいい関係を築いたデザイナーとの仲に亀裂が走るなんて勿体無いですよね。

ここからは私が実際に遭遇した、
「それはやっちゃあかんやつー!!!」と叫びたくなった事例をいくつかご紹介。

デザインが素晴らしかったので流用させていただきました!

元気いっぱいに連絡が来ましたが、完全なる二次利用です。笑
しかも笑えなかったのが、この連絡をくれたのはデザイナーだったというところ。

クライアントA様のデザインを以前私が担当しており、
その後A様と取引を始めたデザイナーさんが、
私のデザインを気に入って勝手に流用し、元気いっぱい連絡をくれた。と。笑
実はデザイナーの中にも著作権やデータの扱いが
わかっていない人がたくさんいるんです。(本当申し訳ないです)

それに、著作権をどう行使するかはデザイナー次第。

もし作ったデザインをその他のものにも使う可能性がある時は、
依頼のたびにに各デザイナーに確認が必要です!

デザイン 著作権

キャラクター使ってロゴと漫画も作っておきました!

こちらも知らないが故の事故ですね…。
元気いっぱいに連絡くれる人は
大抵知らないだけで悪気がないです…が、ダメです。笑

この時は私が作ったキャラクターを、
別のイラストレーターさんと漫画家さんに
別のタッチで描いてもらったそうです。

この場合は、データの二次利用というよりは、盗用になります。

自分が買い取ったデザインだと思っていると、
まさか別のタッチで描いたものが
「パクリ」になるとは思いもよらなかったのでしょうね。

けれど著作権は作者であるデザイナーが自動的に持っているものなのです。
デザイナーが良いと言わなければ、
イラストでもデザインでも写真でも…似せて作ったらパクリになります。
こちらもあるあるなのでお気をつけください!

デザイン 著作権

入稿いただいたデータを他にも色々使い回したいんで著作権だけください!

入稿データとは、印刷屋さんに渡すデータのことです。
この時はイラストレーターのデータを入稿していました。

当然ながら印刷会社さんにお渡しするデータは印刷する時用なので、
そのデータを横から手に入れたからといって
データ譲渡費用を払わなくていいことにはなりません。

秘伝のタレのレシピを人質に取られ、
著作権を譲れ…って、悪質な脅しか!と。笑

実際は笑えませんからね。気をつけましょう!

デザイナーと安心してお付き合いしていくための「まとめ」

著作権とデザインデータの扱いについては下記の通りです。

デザイン 著作権

最後に、各デザイナーへの確認事項が手間だと感じたり、
デザインの依頼はしたいけれど、
出来上がったデータの扱いは一任して欲しいという方は、
先に契約書を作成することが一番間違いないです。

一度作成してしまえば、
その契約内容でOKしてくれるデザイナーを探せば良いだけなので安心です。

テリコ

面倒さもあるけれど、
デザイナーと付き合って行く上では
欠かせない部分でもあります。
逆にデザイナー側にも
この部分のリテラシーは各自持っていて欲しいし、
ここを伝えるのも仕事のうちと捉えて欲しいところ!
気持ちよくお付き合いできる関係性が
お互いにとっての幸せですからね!

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クロハテリハ
ブランドエディター・グラフィックデザイナーです。 2016年にフリー転身。主に個人事業主のビジュアルを含めたブランド作りのお手伝いしてます。人の【変】な部分が大好物。普通の人なんて一人もいないし、みんな自分が変だって気付けばいいのにと思ってます。ウイスキー好きさんも大歓迎。
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具体的に、個人のビジネスパーソンがブランド作りをしていくための手順を、ブランディングをした人の実例を交えながら解説していきます。