参考ブランディング

あなたの世界観は、誰かの心を豊かにする。

ダンスのプロ、カメラのプロ、表現のプロ。

先日、ブラプロの卒業生であるダンサーのあい子さんの撮影に行ってきました。

場所は渋谷。柔らかく白い衣装を纏ったあい子さんに、街なかで踊ってもらいます。
さすがはダンサー。ただ立っているだけでも美しい。かっこいい。纏う空気を一瞬にして作り出す。

それをひたすら「素敵ー!」「可愛い!」「うわ!かっこいい!」と褒めまくって楽しそうにシャッターを切る、カメラマンのながいしほこさん。

二人とも、表現のプロ。
そんな二人を眺めながら、私は荷物を運びつつ、ただただ嬉しい気持ちで眺めていました。

というのも、今回のこの撮影、衣装やシーンをプロデュースしたのは私ですが、当日現場に行って仕舞えばデザイナーにできることは限られています。
人の多い渋谷なので、通行人の邪魔にならないよう声掛けをしたり、カメラが濡れないよう傘をさしたり。
そんなサポート側に徹することができるのは、信頼できるプロの表現者にお任せしているからこそ。

むしろ、荷物を抱えて後をついて歩くだけの私でいられることが、嬉しいのです。

「その人そのもの」が写った写真。

そして仕上がってきた写真。自分でプロデュースしたはずなのに、仕上がりのあまりの素晴らしさに、心が震えました。ちょっと泣きそうになったくらい。

そこには、紛れもない、あい子さんそのものがいました。
って言うと、なんだか変ですよね。

あい子さんの写真を撮ったのだから、あい子さんがいて当然なんだけど、そうじゃないの。

一見その人が写っていても、その人の世界観が伝わってこない…なんてことはザラにあります。
むしろSNSで見かけるプロフィール写真で、世界観までが表現されているものの方が少ないんじゃないかな。

ただただ綺麗でそれっぽい写真を撮るならば、今どきのカメラは優秀ですから。
いい感じの自然光でシャッター切れば、もうそれで。iPhoneだって撮れちゃいます。

では表面的ではない芯を食った写真を撮るのに必要なことはなんなのか?

一番大切なのは、撮られる本人(あい子さん)、撮る人(しほこさん)、舞台を用意する人(私)など、関係者全員が何を表現すべきか、世界観を感覚的に掴んでいること。
ただプロにお願いすれば撮れるのかというと、そうじゃない。

対外的な印象とのギャップ。

なんて、偉そうなことを言ってますが、実は、撮影の直前まで迷っていました。あい子さんの世界観をどう表現すべきか。

あい子さんという人は、とても温和で、優しくて、少し豪快さのある懐の広い人。
ブラプロの受講中も、みんなのお母さんのような安心感があり、いつも楽しそうに笑っている姿が印象的。

一番右があい子さんです。

あと、すごく人に感謝する人でもあります。
いつも「おかげさまで」「ありがとう」って、無意識だと思うけど何回も言ってる。

そんな人なんですが、意外なところに、大きなギャップを持っていました。

それは、あい子さんに「好きな世界観は?」と聞くと、選ぶものがどれもこれも、漆黒の中に極彩色の赤や青が入るような、とにかくブラックでパンチが効いているものばかりだというところ。笑

人って、好きなものには自分の何かが共鳴しています。共鳴しないものは選べない。
何かが反応するということは、自分の中にもその要素を持っていることが多いです。

だから、あい子さんの選択を見た私は、最初かなり戸惑いました。

普段は、明確な言語化を好む私です。言葉にできないことは表現できないとすら考えています。
なので、ギャップの理由を説明できないまま、あい子さんを柔らかく表現すべきか、本人の好みを反映させるべきか、迷いました。

表も裏も包括した表現への挑戦。

その戸惑いを、そのままにしてみようかなと思ったのは、あい子さんからとある過去の話を聞いた時。
「私のギャップは、そこから生まれているのかもしれない。」そう告白してくれた時、なるほどと何かが腹落ちした感覚がありました。

そこから、そのギャップすらも包括した表現ができないだろうか?人に言わない過去や、現実、そんなものは無理に表に出さず、抱えたまま、抱えた状態をそのまま表現する方法は?
そんなことを考えて、結局言語化はできないまま、感覚的にギャップをとらえたままに挑んだのが今回の撮影。

出来上がった写真を見た瞬間「あぁ、それで良かったんだ」と感じました。

ご本人の安定感や存在感と、 白くて柔らかい衣装と、美しい身体の動き。
その背景に背負うのは、今にも雨が降りそうに不安定な曇り空、渋谷の無骨で雑多な街並み、誰かの鬱憤が爆発したようなグラフィティーアート。

それら全てを統合する、写真の質感に唸りました。
言語化なんてできない。けれど、確かにこれ。この人こそがあい子さん。そんな感覚。

感覚の統一の裏にある、ブランドレシピ。

ちなみに、プロデューサーの立場である私が言語化できていない感覚を、どうやって全員で共有するのかというと、ブラプロの中であい子さんと一緒に作ったブランドレシピが役立ちました。

ブランドレシピの中には、大事な言葉とヒントになるビジュアルが詰まっています。
あい子さんご本人は、これをまとめていく中で、自分の中にある大事な要素を再認識していきます。
一緒にまとめていく私も、何度も何度もやりとりすることで、感覚的に掴んでいきます。

そして、出来上がったレシピをカメラマンのしほこさんに共有することで、我々が何を表現しようとしているのかを掴んでもらいました。

「明確に〇〇な感じ。とは言えないけれど、これを読んで、イメージを膨らませてきてください。」

そんな、ある種目指すゴールに霞がかった状態で迎えた当日でしたので、リラックスして自分のままを表現してくれたあい子さんと、感覚を掴んでその世界観を切り取ってくれたしほこさんには感謝ですし、仕上がった写真には感動すら覚えました。

撮ってる時はわからなかったけれど、まるでジャズミュージシャンのセッションのように、3人が共鳴していたんだとわかる写真。
あい子さんという一人の人の表も裏も、人生すらも包括した写真。

誰かの表現に心が震える。こんな豊かなことがあるだろうか。

「人」の世界観と共鳴したい。

これを読んでいるあなたは、自分の世界観の表現ができていますか?
おそらく、ほとんどの人がNoと答えると思います。
そりゃそうです。世界観は深くて、そんな簡単に導き出せるものではないから。

ブラプロでは、その世界観について4ヶ月も向き合います。
これらの写真は1日で撮りましたが、撮るまでに4ヶ月かかっているんです。
けれど裏を返せば、たった4ヶ月であるとも思います。

小手先の差別化や、ちょっと考えて思いついた個性は、取って代わられるまでも一瞬です。
けれど、4ヶ月間自身と真剣に向き合い、導き出したそれは唯一無二です。

そして、そんな表現は見た人の心と共鳴します。

最後に、あい子さんのブランドレシピより【ストーリー】を紹介します。
ぜひ、読んでみてください。さらに深く、共鳴できると思います。

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クロハテリハ
ブランドエディター・グラフィックデザイナーです。 2016年にフリー転身。主に個人事業主のビジュアルを含めたブランド作りのお手伝いしてます。人の【変】な部分が大好物。普通の人なんて一人もいないし、みんな自分が変だって気付けばいいのにと思ってます。ウイスキー好きさんも大歓迎。
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具体的に、個人のビジネスパーソンがブランド作りをしていくための手順を、ブランディングをした人の実例を交えながら解説していきます。