この記事はテリコのキャラクターやお仕事遍歴を知っていただくためにシリーズ化しています。
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1分で捨てるものに金なんかかけられるか!
このセリフは、
私が会社でパッケージデザインを担当していた時に、
化石の如く時代遅れな社長から吐き捨てられた言葉です。
いきなり悪口から始まったね。
はい。根に持っています。
この恨みはらさでおくべきか…!です。笑
\この内容を音声で聴きたい方はこちら↓/
どういうことか説明しますね。
私が担当していたパッケージというのは、
家庭用品(スポンジやタオルやキッチンツールなど)を
販売する際にくっついている、
紙やビニールでできたアレのことです。
「こすらず落とせる!」とか「耐熱温度120℃」とか、
あんまり可愛くもかっこよくもないことが書いてあるアレです。
化粧水のボトルのように、
買った後もお部屋のインテリアの如く
ドレッサーに並べてもらえるようなソレとは違います。

買って1分で、開封されて捨てられる…アレ。です。

だから、
「買って1分で捨てられるものに金なんかかけられるか!」
と言われたのです。
とある商品を担当したときのことでした。
その商品は使いやすさはさる事ながら、
それ以上に可愛さが売りの商品でした。
商品本体をデザインしたプロダクトデザイナーからは
「この子に可愛い衣装(パッケージ)を着させてあげてください」と頼まれていました。
けれどその時パッケージ一個あたりの予算はなんと3円!
コンビニとかに卸すものならね、
何十万個という数を作るので一個あたりの単価は下がりますよ。
けど、その商品の初回ロットはたったの5000個。
正社員は定額使い放題、人件費度外視の会社だったので、
原材料費だけと考えたとしても、一個…3円て。
3円×5000個=15,000円。はぁ…。

いや、普段は、やるんですよ。
この予算内に収まる範囲内での最高のパッケージを考えるんです。
だけど、この時は引けなかった。
3円でなんとかしようと思ったら、
透明のビニール袋にタイトルを一色で印刷するのが限界。
もしくは、印刷無しのビニールにシールを貼る。それくらい。
それではこの子の売りが伝わらない。
むしろ可愛さを殺すパッケージになってしまう。
というわけで…
売りたいならば予算を増やしてくれ。
その代わり初回ロットで生産中止なんてことには絶対にさせない。
必ずリピートがかかるヒット商品にするから!
と、説得にかかったわけです。
そこで言われたかの一言。
「買って1分で捨てられるものに金なんかかけられるか!」

………あぁ!?💢
じゃあ全部ポリ袋に入れて売れるもんなら売ってみろよ!
絶対に売れねーからな!!!
……なーんて言えるわけもなく。
だって売れなかったらいつも
「パッケージのせいじゃないか」って
疑いかけられてリニューアルさせられるんだもん。
どうせ自分に降りかかるなら事前にベストは尽くしたい…
そこから粘りに粘り、
生産管理のお姉様方を味方につけて
安く作ってくれる工場を探し回り、
結果、ゴリ押しで無事に希望のパッケージを作ることに成功。
(予算はちょっとだけオーバーした)
その商品は大ヒット。
何度もリピートを繰り返し、
発売から7年経った今でも売り場に並んでいます。

ただ、それでも、
ヒット商品を作ったことでの社内表彰は、
プロダクトデザイナーだけ。
パッケージデザイナーの私には、
ねぎらいの言葉すらありませんでした。
悔しかった。
報われないと思った。
脳内で社長を何度も〇〇した。←うひひ
けどね、その後爽快な快進撃があったんです。
発売から1年後、そのパッケージはアジアのデザイン賞をとったんです。
しかも、グッドデザイン賞のように
こちらからお金を出して出品するタイプのデザイン賞ではなく、
審査員がいいものをアジア中から探し出して、
半ば一方的に送りつけてくる賞です。
こちらからのアピールはゼロで選ばれたんです。
賞レースをとったら金一封という決まりが社内にはありました。
今度こそ!表彰だ!!!

そう思ったら、
聞いたこともない賞なんて営業の役に立たないから表彰は無し。
今度はそう言われたわけです。
いやいや、あんたらが日本のちっさい賞しか知らんだけで、
こっちは世界に飛び出したんですが?と思ったよね。
今日は荒れるね〜。
得意の思い出し怒りだね!笑
それでもまだ折れない私と私の可愛いパッケージちゃん、
さらにその数年後、「パケ買いしたくなるデザイン」
という本に載ったんです。
これはもうヒットの要因の中に
パッケージの力があったと認めざるを得ないでしょう!
本や雑誌への掲載は、会社HPのトップに載せてもらえるはず!
意気揚々と広報チームの元へ行き、
「HP載せてくれるよね!」と言うと、
商品自体の紹介じゃないし、
専門誌への掲載は消費者さんには響かないから…
と言われまたしても撃沈!!!
いや〜本当に報われない!
笑っちゃうくらい報われない!🤣
けど、私の中にはある種の爽快感がありました。
要は、この会社は、
パッケージデザインというもの自体を軽んじているんだ。と。
だから、売れようと賞を取ろうと、
「パッケージが良かったおかげ」となる日は
今後も来ないんだなと悟ったわけです。
でも、事実として、
消費者の方は評価してくれているから売れているわけだし、
デザイン賞も取って本にも載って、
なんなら会社の人以外の世界中の人が味方なんじゃないか?
って思えたんですよね。
それと同時に、
どうして私はわざわざ認めてもらえない場所で
認めてもらおうとして頑張ってるんだろう?
そう感じたことが、
独立の道を選ぶきっかけになった気がしています。
そこから、
置かれた場所なんかで咲こうとするな。
自分の足で咲く場所探せ!
という精神で動きまくって今に至ります。
内容が内容なだけに
今回はなんの商品だったのか?
どの本に載ったのか?は控えさせていただくとして、
画像は最近買ったお気に入りのパッケージの本です。

色んな思いがあったパッケージデザイナー時代があるから、
今でもパッケージを見る時間は大好きで、至福です。

ちなみにね、
パッケージデザインて、めちゃくちゃ難しいって言われてます。
パッケージってことは、商品本体じゃないわけで、つまりは引き立て役。
デザイン界のバイプレイヤーなんです。
役者でも、バイプレイヤーって演技力高くて職人的な人多いでしょ?
バイプレイヤーの良さがわからないなんて、
やっぱりあの社長の目は節穴だったわ!
って思います。←やっぱ根に持ってる。
けどそれと同時に、
難しいパッケージデザイナーとして七転八倒繰り返したあの日々が、
今の私の強固な土台。
それは本当にありがたいことだったなと思っていたりもします。
